このページでは中小企業診断士2次試験事例4の頻出内容の1つであるキャッシュフロー計算についてまとめました。
キャッシュフローとは何?
まずは、キャッシュフローの定義からです。Wikipediaには以下のように書かれています。これを読んでもよく分からないという方は、更に下にあるキャッシュフローを計算する目的や実際の計算方法について先に読んでもらった方が分かりやすいと思います。
キャッシュ・フロー(cash flow、現金流量)とは、現金の流れを意味し、主に、企業活動や財務活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのことをいう。
損益計算書と異なり、現金収支を原則として把握するため、将来的に入る予定の利益に関してはキャッシュフロー計算書には含まれない。
なぜキャッシュフローを計算するのか?
キャッシュフローを計算する目的は、実際のお金の収支を把握することです。反対に、キャッシュフロー計算をしない場合どうなるかというのを考えてみると、会社の業績を知るための資料はBS(貸借対照表)とPL(損益計算書)だけになります。BS、PLでは実際にお金の動きが無くても数字が増えたり減ったりすることがよくあるため、お金の流れが分からなくなってしまいます。
そこで、実際のお金の動きがない費用についてはノーカウントとして考える別の計算方法としてキャッシュフロー計算が登場します。
「実際のお金の動きが無くても数字が増えたり減ったりする」とは?
例えば、1,000万円の設備を持っていたとします。設備は年々劣化していくため、その資産価値は年々目減りしていきます。この、資産価値の目減りを減価償却と言いますが、減価償却費はPLの中に現れます。減価償却費はお金を使ったわけでもないのに、PLの中で売上金額から費用としてマイナスされることになります。
他の例として、商品を10万円で販売した場合を考えてみます。取引は通常掛取引のため、商品を引き渡した時点では代金を受け取ることはできません。決められた期日までに振り込まれるというのが一般的です。それなのに、PLの中でこの10万円は売上金額としてプラスされます。
以上のような内容は事業をする中で他にもたくさん出てきて、BS、PLだけ見ていると実際のお金の出入りが分からなくなってしまいます。
キャッシュフローの種類は?
キャッシュフローには、営業キャッシュフロー(以下営業CF)、投資キャッシュフロー(以下投資CF)、財務キャッシュフロー(以下財務CF)の3種類があります。中身は名前の通りですが、それぞれ営業に関するもの、投資に関するもの、財務に関するものです。
また、この他に上記のキャッシュフローの合わせ技のようなフリーキャッシュフロー(以下FCF)というものがあります。FCFには定義がいくつかあるのですが、中小企業診断士試験で登場するものは以下の2つです。
1、FCFF(Free Cash Flow for the Firm)
FCFF = 営業利益×(1-税率)+減価償却費-投資額-運転資金の正味増加額
で表されます。
運転資金の正味増加額には様々なものがありますが、よく登場するものとしては、「売上債権」、「棚卸資産」、「仕入債務」というものがあります。これらを使って運転資金の正味増加額を分解すると、
運転資金の正味増加額 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
となります。ちょっと苦しいですが、暗記するために「ウサギが楽しそうさ」とか「ウサ楽しいさ」等の語呂合わせがあります。
2、営業CF+投資CF
FCF = 営業CF+投資CF
で表されます。簡易的なキャッシュフロー計算と言われています。
<試験対策のポイント> 試験の中では、上記の2つをどちらも単にFCFと呼び、問題の中でどちらの考え方を用いるかというのは明示されていないことが多いですが、与えられた情報からでは、どちらかの方法でしか計算できないようになっていると思います。FCFFを使うケースが多いです。 営業CFを聞いているのか、FCFを聞いているのかというのも見落としがちなので注意してください。 |
キャッシュフローの計算方法
営業CF、投資CF、財務CFについて計算方法を紹介します。
営業CF
計算方法という言い方をしましたが、以下の表の内容を足し引きするだけです。途中で小計があったり、特別利益を最初にマイナスしておいて後から結局プラスする等、気になる点はあると思いますがとりあえずこういうものだと覚えてください。「増減額」と書いてあるものは前期と当期の差分の値で考える必要があること、+-の符号には注意してください。
<試験対策のポイント> ケースとしては少ないですが、過去に表の丸暗記が必要な問題が出題されたことがありますのでキャッシュフロー計算は暗記が必要です。 |
項目 | +-の符号 |
税引前当期純利益 | + |
減価償却費 | + |
貸倒引当金の増減額など | + |
営業外収益 | - |
営業外費用 | + |
特別利益 | - |
特別損失 | + |
売上債権の増減額 | - |
棚卸資産の増減額 | - |
仕入債務の増減額 | + |
小計 | |
利息の支払額 | - |
利息の受取額 | + |
特別利益※ | + |
特別損失 | - |
法人税等の支払額 | - |
営業キャッシュフロー合計 |
※特別利益が有形固定資産の売却益の場合、こちらの項目は不要
特別利益が有形固定資産の売却益の場合、上記の項目が不要な理由は、有形固定資産の売却益は投資CFに記載するためです。これがどういうことかというのは以下に詳しく説明します。
営業CFの計算を上から追っていくと、当期純利益から特別利益をマイナスした後、再度プラスしています。表中に赤字で記載した特別利益をプラスする項目を無くすということは、当期純利益から特別利益をマイナスだけするということになります。特別利益が有形固定資産の売却益の場合、この状態は、当期純利益から有形固定資産の売却益を除いた状態になります。ここで除かれた有形固定資産の売却益は投資CFの中に登場するため、これで辻褄が合うということになります。
投資CF
項目 | +-の符号 |
固定資産の購入支出 | - |
固定資産の売却収益 | + |
投資有価証券の購入支出 | - |
投資有価証券の売却収益 | + |
投資キャッシュフロー合計 |
財務CF
項目 | +-の符号 |
短期借入金の返済による支出 | - |
短期借入金の借入による収入 | + |
長期借入金の返済による支出 | - |
長期借入金の借入による収入 | + |
配当金の支払 | - |
財務キャッシュフロー合計 |
第1法、第2法について
先ほど、営業CF、投資CF、財務CFの計算方法を表にしましたが、実はこの計算方法についても考え方が複数あります。それが第1法、第2法です。
先ほどの表は第1法で表現していますし、中小企業診断士試験でも第1法が使用されていますので第2法については、そのような考え方があることだけ知っていれば良いと思います。一応第1法、第2法について説明しておきます。
第1法
・利息の受取、配当の受取、利息の支払については営業CF
・配当の支払については財務CF
第2法
・利息の受取、配当の受取は投資CF
・利息の支払、配当の支払は財務CF