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「ストーリーとしての競争戦略」感想

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知人に勧められて「ストーリーとしての競争戦略」という本を読んでみました。名前の通り戦略について書かれている本なのですが、よくある戦略書のつくり方とか、戦略策定のためのフレームワークを紹介したようなものではなく、戦略策定に関するもっと根本的な考え方を説明している本でした。なるほどなーと思うところがいくつかあったので備忘録的に残しておきます。

この本は、戦略書のテンプレートとか作成手順が書かれているものではないため、「目下、戦略書を作らないといけないのにやり方が分からないから参考書が欲しい」という方にはおすすめできません。でも、優れた戦略についてのそもそものベースとなる考え方の理解という点ではおすすめの本です。

本の導入部分には「事業の成功の20%は説明できるが、残りの80%は運とか勘のようなもので説明ができない」と書かれています。また、既存の戦略論の研究では企業の成功を法則化しようとしているがそんなことはできないというようなことも書かれており、下手をすれば自己否定をし兼ねない内容についても、「間違っているものは間違っている」と正直に書いているというスタンスが気に入りました。もちろん、本の内容の本番はそれ以降の話しで、事業の成功で説明できないのはどのような部分なのか、なぜ説明ができないかという点についてがしっかりと論理的に説明されています。500pでなかなかボリュームがあり、ちょっと冗長なところもありますが、読んでおいて損はないものと思います。

「ストーリーとしての競争戦略」を読んだ感想

本を読んで、特に参考になった点を3つほど感想としてまとめておきます。

1、SPも大事だがOCが大事

最初に用語説明ですが、SPはStrategic Positioning、OCはOrganizational Capabilityの略です。世の本では単にポジショニング、ケイパビリティと言われていることが多いですが今回はこの本にならって以降、「SP」、「OC」を使おうと思います。

筆者はSP、OCをレストランの運営に例えていました。SPはどんな料理を作るのかのレシピ、OCはコックの腕、料理の味という感じです。SPは「何をやるか」という取捨選択の話しで、OCは「どの程度やるか」という程度、強度の話しという言い方もしています。

SPは何をやるかを決めるため、実行した際の成果との因果関係が比較的明確、OCは因果関係が不明確という説明をしていました。

また、SPが決めればすぐに実現できるのに対し、OCは獲得するのに年数がかかるということも書かれていました。このため、SPよりもOCが強い企業の方が長期的な強みがあるとのことです。

本を読んでいくと、自分は普段SPの考え方に偏っているなーと反省しました。「何をやるか」が重要で「どうやるか」、「どのくらいやるか」は2の次という感じで考えてました。筆者も、戦略を考えるような人はSP寄りに考えることが多いと言っています。SPの方がガバナンスが効き、OCはそうでないからです。

まあ戦略を考える時に、「それぞれの社員の頑張り度合いにかかっている」何て言い出してもしょうがないので、SP寄りの思考になるのはしょうがないとは思いますが、それだけじゃダメだということですね。

先ほども書きましたが、OCは成果との因果関係が不明確です。そもそも「我が社のOCは○○である」ということはその会社自身も説明できなかったり、ハッキリと把握さえしていないということも少なくないそうです。SPは論理的に考えつつも、OCはモヤモヤとした状態、でも確かに存在する。そんな論理性とあやふやさのバランスを取って進めていくのが経営の難しさという感じなのでしょうか。

繰り返しになりますが、これまで自分はSP寄りの思考で戦略を単純に捉え過ぎていたなー、実はOCの方が企業の本当の強さになるんだなーというのは反省であり、勉強になった点でした。

2、1つの必殺技によりかかる戦略は案外弱い

勉強になった点の2つ目は、「1つの必殺技によりかかる戦略は案外弱い」ということです。このことについて筆者はサッカーで例えていました。

メッシ、ロナウドなどの1人のスター選手がいることはもちろんそのチームの大きな強みになります。でも、その選手が脱退するとか、対戦相手からしっかり分析されて対策されてしまうとかでスター選手を封じられると、そのチームには強みがなくなってしまいます。相手チームが他のスター選手を獲得することもお金さえあれば簡単にできてしまいますよね。反対に、個々の選手はそれほど強くなくても、例えばチームが複雑で、実行の難しい戦術を身に付け、それを駆使して戦えば、失いづらく、対戦相手には獲得しづらい大きな強みになりますよね。

企業も同じで、大ヒット製品が出たとか、強力な特許を持っているとかは確かに大きな強みですが、それは一時的な強みでしかなく、長く続く本当の強みはもっと別のところにあるべきです。

3、優れた戦略とは

「優れた戦略とは」というのはこの本「ストーリーとしての競争戦略」の主題そのものです。上に書いた1、2の内容もこれに含まれちゃうのですが、要はどういうものが優れた戦略なのか、私の理解を簡潔にまとめます。

優れた戦略で重要なのは個々の要素じゃなくて、それらの結びつきです。結びつきと言うのは、単に戦略に重要な要素が個別に考えられているのではなく、それぞれが関係し合っているということ。また、ある戦略を実行した結果、他の戦略要素に良い影響を与え、それが良いスパイラルを作って、企業の強みがどんどん強化されていくという時間的な要素も考えられていなくてはならない。

本を読んでいない方にはこれだけだと訳が分からないと思いますが、書き出すと非常に長くなりますし、結局は本を読んだ全体感の中でしか理解できないためここまでの記載とさせてください。

以上のように結びつき、流れの視点で考えると、戦略書の例として、テンプレートはあり得ないと思いました。よく見るパワーポイントの戦略書として、「販売のターゲットは○○」、「作る商品のスペックは○○」、「販売地域は○○」というものがあるんですが、こういう見方をすると、それぞれの要素の関係とかその先に狙うものとかが見えなくなってしまいますよね。もっと、「○○を狙っているから、コストダウンが必要なんだ」とか、「○○というユーザーを獲得することで、会社をこうしたい。その結果〇〇になる。」とか、戦略書にはそういう主張が必要なんでしょう。そういう考え方をすると、ターゲット、スペック、販売地域という様にキレイに分けることはできず、要素を横断する書き方になってしまうのかなーと思います。

筆者は戦略には「なぜ?」それをやるのかが重要としきりに言っていました。すぐ上に書いたことは、私の考えで書いたつもりでしたが、筆者の主張を言い換えているだけかもしれません。

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