最近考えている自分の目指したい働き方の1つに「他者の力を100%以上引き出す」というテーマがあります。このテーマに関連したスキルとしてぴったりのものとして『ファシリテーション』というスキルがあり、それについて本を読んだので内容を残しておきます。
感想の前にちょっとだけ『ファシリテーション』とは何かについて触れておきます。ファシリテーションというのは、会議の中で参加者から優れた発言を引き出したり、それを上手くまとめることで会議をレベルアップさせるスキルのことです。私がテーマにしている「他者の力を100%以上引き出す」というのにピッタリじゃないでしょうか。
本の内容まとめ
この本は、ファシリテーションについての実践的ハウトゥー本です。ファシリテーションについて、どんな能力が必要なのか、どんなことに気を付けて良いのかが淡々と書かれています。
本の構成は大きく2つに分かれています。1つはファシリテーションとは何か?ファシリテーターに取って重要なことは何か?という目次的な章です。筆者はここで、ファシリテーションで、重要なことを5つに分類しています。
筆者の言う5つの項目とは
1、議論の構成の設計
2、アイデアを引き出す上手い問いかけ
3、出てきたアイデアの整理
4、グラフィック(≒ホワイトボード)の利用
5、議論が上手く進まないときの対処方法
です。
もう1つの章では上に出てきた5つの項目について、どんなことに気を付けてファシリテーションしていけば良いかというのが実践的に記載されています。
それぞれの詳細な内容はここでは記載しませんが、以下、特に参考になった部分について紹介します。
リーダーとファシリテーターの違いとは?
さっそくファシリテーションとは直接関係ない内容になってしまいますが、リーダーとファシリテーターは違うのか?という面白い内容が書かれていました。
正確には、本に書かれていたのは「ファシリテーターにリーダーシップは必要か?」というテーマになります。これに対する答えは『必要』です。ファシリテーターには強力なリーダーシップが必要という見解でした。
なぜかというと、会議の参加者はファシリテーションについて知見の無い人であることがほとんどであるため、的外れな意見や、無責任な発言が増える。リーダーシップを発揮せずに自分は司会者だという立場で望んでしまうと、タチの悪い議論に飲み込まれて、上手くファシリテーションができないからということでした。
リーダーはどうあるべきか?
こちらも引き続きファシリテーションの話しではないのですが、先ほどの話しの続きで興味深い内容が書かれていました。
ここに書かれていたのは、「リーダーの役割は決めること。メンバーと一緒に良いアイデアを出すことではない。」ということでした。
本には、この役割分担を十分認識できていないリーダーが多いという話しも書かれていました。リーダーが、自分の役割を「良いアイデアを出すこと」と勘違いしていると、メンバーと自分のアイデアを競い合わせて、自分のアイデアの方が勝っているという思考をしてしまうそうです。これは確かにそうだと思いました。
これに関連して良いリーダー、悪いリーダーとはなんだろうというのを考えてみました。(※以下は本の内容じゃなく私の考えです)
本にはリーダーの役割は良いアイデアを出すことでなく、決めることとありましたが、アイデアを全然出さない、アイデアの切り盛りだけをやっているというのが良いのでしょうか?
反対に悪いリーダーや、「このリーダーだめだな」と感じる場面を想像すれば良いリーダー像が浮かび上がるのでしょうか?悪いリーダーについてイメージしてみると・・・
私がよく遭遇する悪いリーダーの行動に、メンバーのアイデアに対して、細かな抜け漏ればかりを探して指摘してくるというのがあります。こういう点に気がつくのは経験が重要なので、全くダメだとは言いませんが、これがリーダーの仕事かというと疑問です。リーダー云々というよりは経験豊富な年長者の仕事という感じがします。
そして、この話しを踏まえ、再び良いリーダーの話しに戻ります。理想的には、悪いリーダーとは逆に大まかな方向性についてはリーダーがアイデアを考え、詳細、細かなアイデアをメンバーから引き出すというのがあるべき姿ではないでしょうか。これが、最初の問いかけに対し私が考えた良いリーダーの行動です。つまり、リーダーはアイデアを出すが、それは細かな内容でなく全体の方針などについての内容。ということです。
再び悪いリーダーの話しに戻り、悪いリーダーはメンバーのアイデアに対して、どのような視点で指摘すれば良かったのでしょうか?
1、メンバーよりも、より大局的に見たときの指摘
2、(細かな指摘でなく)致命的な抜け漏れや間違いに対する指摘
3、部下が情報不足で導いたアイデアの修正
あたりにリーダーの力の見せ所があるように思います。
意見の整理の方法
出てきた意見の整理の方法についてです。会議をやっていたり、データを分析しているとこんな表を作ることはないでしょうか?
A案 | B案 | C案 | |
メリット | |||
デメリット |
筆者によるとこの分析、整理の仕方はあまり良くないようです。理由は、「メリット、デメリットという切り口が主観に強く依存するために整理があいまいになるから」だそうです。
こういう整理の仕方をせずに、「価格」とか「品質」とか明確な基準を作って整理をすることが勧められていました。
私もこのメリット、デメリット整理はよく使ってしまっていましたが、「メリットに出てきたことの裏返しがデメリットになる」という面で使いにくさを感じていました。今後は封印するようにします。
議論を後戻りさせないために
会議が終盤に向かい、そろそろ決着をつけないといけないというタイミングでこれまでの議論をひっくり返される経験をしたことがある方も少なくないと思います。それに対する対策についてです。
筆者が勧めている対策は、「要所要所でこまめに合意を取ること」です。ファシリテーターは、会議の中でタイミングを見極めて、「ここまでのところの結論はこれで良いか?」「言い足りないところはないか?」というのを何度か入れ込むことが必要です。