学習方法(2次試験)

【2次試験の解き方例】平成30年|事例Ⅰ|中小企業診断士

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ここでは私の2次試験の問題の解き方を紹介したいと思います。「これとこれに気を付ければOK」というようなキレイにまとまった内容ではなく、私が試験問題を解くときにどんな風に考えているのかというのをツラツラ長々と書いたものです。読みにくく、まどろっこしく感じると思いますがこの方が伝わることもあるかと思い、書き出してみました。

今回、題材にしたのは、私が受験した際、4事例の中で1番得点の高かった事例Ⅰです。得点開示請求をしたところ、73点と高得点だった回答なので参考にしていただける内容になっていると思います。(100点満点中73点なので高得点じゃないと思われるかもしれませんが、診断士仲間に聞いた結果や、ふぞろいな合格答案を見てみても80点以上取っているというケースはほとんど無いんです。なので、73点は高得点なはず。)

ちなみに私の事例Ⅰ~Ⅳの成績は以下のとおりです。

以降の内容は、事例Ⅰの問題をお手元で見ながら読んでみてもらえればと思います。

このページ内に事例Ⅰの問題は直接掲示していないので、持っていない方はこちらから入手してください。

それでは、平成30年の2次試験事例Ⅰの私の解き方を紹介します。

1、自作のファイナルペーパーを見て、注意点を思い出す。

こちらは、問題を見る前。試験本番当日で言うと、問題と回答用紙を配られる前の時間にやることです。

ファイナルペーパーというのは、自分のために作った、2次試験を解く際の注意点をまとめたものです。試験開始前にファイナルペーパーを見直して、これまで準備してきた通りに試験を解ける状態に持っていきます。

私の場合、事例Ⅰ向けのファイナルペーパーの内容で特に大事と考えているのは下記の4つです。

  • 1、回答は与件文に書かれている内容から答えること。
  • 2、いきなり回答の下書きを書き始めない。まず頭の中で「考え」て、問題用紙の余白に、書きたい内容案を「書き出し」、その中から必要な内容を「選別」して、「文章の形にする」。最後に、指定の「文字数に調整」する。
  • 3、事例Ⅰは組織・人事に関する問題。マーケティングがテーマではないことに気を付ける。
  • 4、採点は加点方式。なるべく多くの内容を書くことを心がけること。

ファイナルペーパーとは?の説明や、私が作ったファイナルペーパーの全体について詳しく知りたい方はこちらのページを見てみてください。

ファイナルペーパーと2次試験境地

2、設問を読む

与件文を読む前に設問を一通り読みます。先に設問を読むことで、どんなことを問われるのかを把握できるため、与件文を読む時にどの部分に着目すれば良いかが分かりやすくなります。

(以上は理想的な話しで、実際には設問の内容を完璧に頭に入れながら、与件文を読むなんてことはできません。頭の片隅に残す程度に考えて、1~2分以内でサラっと目を通す程度に読めば良いです。)

私は、こんな風に設問を読みました。

第1問については、「A社は規模の小さな市場をターゲットにしてるんだな。競争戦略の視点からだから、規模が小さい=ライバルも少ないみたいなことを答えるのかな?」という感じ。

第2問については、「コンシューマ向けの製品に力をかけなかったんだ。経営危機で、複写機に手を出したんだな。」くらい。

第3問はよく分からないので無心にサラっと読みました。

第4問は「例年よく出題されるやつだな。これは与件文に答えが無い系だから、よくある答えを書けばOKかな。」

3、与件文を読む

次に与件文を読んでいきます。与件文を読む時に気を付けたいのは、「自分ルールを作って、マーキング等をしながら読むこと」です。与件文は最初に一通り読んだ後、設問を読んでからも何度も読み直す必要があります。マーキングをしておいた方が、2回目以降読むときに読みやすくなります。

私の場合、マーキングのルールは以下の通りです。

1、SWOTに関する箇所にはそれぞれ、S、W、O、Tと書き込む。

2、他、重要そうな箇所にはアンダーラインや丸付け等をする。

マーキングは自分がやりやすいルールなら何でもOKだと思います。試験本番では、色鉛筆や蛍光マーカーを使うことも問題ないので、色を使ってマーキングすることもできます。私が2次試験を受けた時は、周囲に傾向マーカーを持っている人がかなりいました。半分以上の方が持っていたと思います。

私も1度色分けに手を出してみたことがありましたが、合わなかったので止めました。何色が何の意味だったかを覚えるのが大変だったので、試験本番で余裕がない時にそこまでやってられないなと感じたからです。

それでは、実際に与件文を読んでいきたいと思います。

 

はじめは、A社の概要についての説明です。これは例年同じパターンですね。売り上げ高や資本金、従業員数などが書かれていますが、回答でこれらを使うことはほとんどありません。『従業員のほとんどが正規社員』というのはちょっと注意して読むべき点です。「組織の効率化のために、契約社員を活用する。」とか、反対に、「正規社員が大半であることを活かして、安定した経営をする。」という使い方をする場面があります。

次の『電子機器開発に特化』、『生産を他社に委託し、販売も信頼できる複数のパートナー企業に委託』というところも大事そうですね。これらはA社の強みとして使えそうな文言です。(『生産、販売を他社に委託』は場合によっては弱みになるかもしれないですね。)

続いての売上比率のところで注意して読みたいのは、『6割が複写機系、4割が受託開発品』であるという売上構成の特徴。『受託して開発している』という事業の特徴、『電子機器の部品から完成品まで多様で幅広い』という事業の特徴です。『多様で幅広い』というのは、裏を返せば選択と集中ができていないということになります。企業の業績が悪い原因として、このことを指摘したり、選択と集中をすることで業績向上を目指すというような回答をするというには、2次試験でよくあるパターンです。

次の社長の経歴は一応気にしておきたい内容ですね。私はこういう情報を回答に使うことは少ないですが、『大手メーカーの技術者として働いていた』というのはA社の強みとして使える可能性があります。

次の『コアテクノロジーであるセンサー技術』は要チェックですね。これはストレートにA社の強みと言っていると読み取る必要があります。

『主力取引先以外との共同プロジェクト』『もっとも、当時は売上の8割を主力取引向けに依存』あたりは流れとして非常に気にすべきところですね。「主力向けに依存していたのが悪かった。共同プロジェクトが増えて流れが変わった。」という話しがこの後出てくるかもしれません。ただ、与件文を1回目に読んでいる時には、そこまで理解できなくても問題ないと思います。与件文は時系列順に書かれている訳ではないので、読んでいて時間関係がすぐに把握できないことはよくあります。設問を読んでから再度与件文を読む際に整理できていれば良いと思います。

次の段落の内容は、「外部環境の悪化で経営も悪化したんだな。脱却するために新製品開発にチャレンジしたんだな。」とサラっと読んでおけば良いです。

その次の段落も色々と書いてありますが、重要な点は多くありません。『売切り型の事業の限界を打ち破るために複写機関連事業に取り組んだ』というところがポイントです。複写機ビジネスについて知識がある方なら、ここで「複写機を売った後、トナーとか紙とか、保守費用で収益を得続けられることを言ってるんだな。」とピンとくると思います。

この後の2つの段落については、全体の話しの流れだけ理解しておけば良いです。「複写機事業は最初上手くいっていたが、途中で上手くいかなくなってきた。それでもA社は諦めずに続けた。」という話しですね。

『フランチャイズチェーンが・・・』というところは私が受験した時に惑わされた文言です。ここはフランチャイズチェーンだろうが、個人商店だろうが、ストーリーには全く関係無い部分なのですが、受験当日は、「フランチャイズチェーンってことは・・・何なんだ?」と考えて余分な時間を使ってしまいました。

ここからA社の組織の特徴について説明されます。組織の説明はしっかり読まないと頭の中がごちゃごちゃしてしまうのでここは時間を多めにかけて読むところです。組織図を図示してみても良いと思います。ただ、私の場合は、組織についての説明は1回で理解することは諦めて、サラっと読んでしまうことが多いです。設問を読んで戻って来た時に必要な箇所をしっかり読み込みます。

「『技術者が9割』というのは、A社の強みだけど、今後の改善ポイントになるかもしれないな」くらいは1回目で把握しておきました。

『人材は重要な経営資源。それを支えているのが人事制度』。これはこの後重要なことが話されるな、という感じがしますね。『新卒者を原則採用せず』、『Uターン、Iターンを採用』、『年功給を少なく、成果を重視』は人事制度としてチェックすべき内容です。その後出てくる『社員持ち株制度』、『社員全員による海外旅行』、『売上の1%を報奨金』というのは更に具体的なA社の制度の特徴です。このあたりは回答にそのまま使えそうな内容ですね。

 

以上、与件文を読む時の私の考え方を書き綴ってみました。

私が実際与件文を読みながらマーキングした問題用紙はこちらです。

マーキングは波線だったり四角で囲っていたり色々な種類がありますが、これには特に意味はありません。線の種類に自分ルールを作ろうと思ってこともありましたが、色付けの時と同じようにそこに頭を使っている余裕は無いと考えて、重要そうなところに目印を付けるだけの使い方にしました。

4、回答

いよいよ回答パートに入ります。ここまで長かったですね。読んでくださった方はありがとうございます。

回答パートでは、最初に試験の設問を書いて、その後私の回答導出までの経緯解説という書き方で進めます。

第1問

研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。

 

この問題は、1次知識が比較的直接必要になる珍しいケースですね。何を言っているかというと、『競争戦略の視点から』というところです。「競争戦略」というのが何を指すのかが分からないと正しい回答ができないですよね。

とは言え、競争戦略とは?を完璧に答える必要はなく、コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、ニッチ戦略とかがあったなー程度が思い出せれば十分回答できます。

私は、与件文を再度読み直す前に、「大きな市場を狙うと、大手とターゲットが重なってしまう。」「A社の限られたリソースを得意な事業に絞り込むことで差別化する。」というような内容で書こうということを問題文の余白にメモしました。A社は差別化、ニッチを狙うという内容を書こうという意図です。

一応、与件文で関係ありそうな箇所を読み直しましたが、なぜ小さな市場を狙うのかというこの設問に直接使えそうな表現は見当たりませんね。

私が試験本番で書いた回答は「規模の大きな市場は、大手をはじめたくさんの競合が参加し、A社が生き残るのは難しいため、競合が少なく、強みである技術力を生かし、他社と差別化できる市場をターゲットとしたと考えられる。」(90文字)です。

与件文から抜き出せたのは、「技術力が強み」ということくらいですかね。他の内容は、「競争戦略」について理解していることをアピールしようとして、その点の説明としておきました。

 

続いて問2です。

(設問1)

A社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。A社の人員構成から考えて、その理由を100字以内で答えよ。

ここは、与件文にある『A社の社員の9割が技術者』という内容をメインにして答えようと考えました。人員構成や組織について書かれたあたりを読み直しましたが、他に使えそうなものはありませんでした。

清書の前にメモしたのは、「技術者中心なので、マーケティング・宣伝広告が重要な最終消費者には向いていない。」という内容です。

私の最終回答は、「最終消費者向けの製品には、マーケティング・宣伝広告が重要であるが、A社では技術者が9割という人員構成のため、強みを活かすことができず不向きな市場であったためと考えられる。」(85文字)でした。

 

(設問2)

A社長は経営危機に直面した時に、それまでとは異なる考え方に立って、複写機関連製品事業に着手した。それ以前に同社が開発してきた製品の事業特性と、複写機関連製品の事業特性には、どのような違いがあるか。100字以内で答えよ。

回答を考えるにあたり、与件文の、複写機事業に取り組み始めた経緯のあたりを読み直しました。

回答の下書きとして、私がメモしたのは、「売切り型と異なり、トナー等の消耗品を継続的に販売できる。」、「BtoBで景気の波に左右されにくい。」の2つです。

最終的な回答は、「以前の製品は、売切り型で、顧客との継続取引がなく、新製品開発、新規顧客開拓をする必要がある。複写機関連製品では、1度購入されると、その後の保守や、消耗品の継続購入があり、長期的な収益を期待できる。」(98文字)でした。

下書きには「BtoB」の内容を書きましたが、与件文に出てこない話しなのでこれに触れるのはやめました。その変わり複写機事業のメリットについては、単に「継続取引で利益が出る」というだけでなく、「開発」や「顧客開拓」の労力を削減できるというニュアンスも盛り込みました。複写機のビジネスモデルは有名なので、私はよく知っていました。ですので、ここでは知っている知識からあまりマニアックな内容を答えず、与件文+中小企業診断士としての知識の範囲内で答えられるように注意して回答を考えました。

 

第3問

A社の組織改編にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。

ここは、1回目に読んだ時にザッとしか読んでいない組織についての内容だったのでまずはしっかりと与件文を読み直しました。A社では電気、機械、ソフトのように専門知識ごとに分かれていたグループを、開発、品質、生産のように編成変えしていますね。また、開発部門は以前のような専門知識ごとの編成でなく、異分野の技術者の混成チームに変更していますね。

私は回答の方向性として、「品質、生産、他の技術部門など他分野との交流で能力や士気向上」、「リスクに備え、複数の事業を効率的に育てる」という2つを考えました。

そして、最終的な回答は「目的は①リスクに備え、核となる複数の事業を効率的に運営すること②他分野の社員を交流させることで、専門以外の知識を持たせること、社員同士の交流を持たせ、士気向上に繋げること。」(86文字)としました。

 

第4問

A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として100字以内で助言せよ。

 

最後の設問ですね。金銭的・物理的インセンティブがダメということなので、精神的な内容で答えよということですね。

与件文を読み直してみましたが、与件文には金銭的、物理的インセンティブしか書いてませんね。抜き出しは諦めて、よくあるものをいくつか挙げて答えることにしました。

回答は、「取り組むべきことは①本人と話し合い、納得感を持って業務を割り当てる②学会、展示会等への参加を奨励する③社内外の技術者との交流を奨励する④社内発表会等を企画する。等により士気向上させる。」(92文字)です。

 

以上、私が平成30年2次試験事例Ⅰを解いた時にどんなことを考えて取り組んだのかを紹介しました。初めて見た方はどう感じたでしょう。「こんなへぼい回答で73点も取れるのか?!」と思った方は2次試験の才能があるかもしれません。

改めて見ると、この年の事例Ⅰは与件文からそのまま抜き出しというのが少なかったように感じます。2次試験の学習を進めてきた方は、回答は与件文の中から抜き出しというのを気を付けていると思います。そういう方にとっては「何でこの答えで良いんだ?」と思われるかもしれませんが、与件文に無い内容でも、私の回答にある内容は、2次試験でよく使われるオーソドックスなものです。過去問を何年分が解いていけばどの内容を使えば良いのかという感覚は付いてくると思います。

当初心配した通り、読みにくい長文になってしまいましたが、何かのお役に立てればと思います。ここまで読んでくださった方はありがとうございます。

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